た。
「姉さんは委《くわ》しいことを知っていましょうか」
「これがまた難物だテ。気でも違えられた日には大事《おおごと》だからネ。まあソロソロと耳に入れた。その為にああして長く伊東に置いて、なるべく是方《こっち》の話は聞かせないようにしたよ」
 その時|下婢《おんな》が夕飯の膳を運んで来た。三吉は下婢を返して、兄弟ぎりで話しながら食うことにした。
「どれ御馳走に成ろうか」と森彦は性急な調子で言って、箸《はし》を取上げた。「兄貴の家にも弱ったよ。ホラ、お前の許《とこ》のお雪さんが先頃|拝跪《はみ》に来て、当分仕送りは出来ないッて断ったもんだから、俺の方でどうにかしてやらなくちゃ成らない……しかし、お前も御苦労だった。お互に長い間のことだから。加《おまけ》に、各自《めいめい》家族を控えてると来てる」
「実際、私の方にも種々な事情が有りましてネ。学校の貧乏なところへもって来て、町や郡からの輔助は削《けず》られる、それでも教員の数は増《ふや》さんけりゃ手が足りない。私も見かねて、俸給を割《さ》くことにしました……まあ、当分輔助は覚束《おぼつか》ないものと思って下さい……そのかわり橋本の姉さんは私
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