《かちぐり》、それから膳《ぜん》に上る数々のもので、屠蘇《とそ》を祝った。年越の晩には、女髪結が遅く部屋々々を廻った。お種もめずらしく、豊世の後で髪を結わせた。姑の髷《まげ》がいつになく大きいので、それを見た豊世は奇異な思に打たれた。
 お種はその晩碌に眠らなかった。夜の明けないうちに起きて、サッパリと身じまいした。
「まあ、母親《おっか》さんは白粉《おしろい》などをおつけなさるんですか」と豊世も臥床《とこ》を離れて来て言った。
「私だって、つけなくってサ」とお種は興奮したように笑った。「若い時はいくらでもつけた」
「若い時はそうでしょうけれど、私が来てから母親さんがそんなに成さるところを見たことが無い」
「さあ、さあ、豊世もちゃっと化粧《おつくり》しよや。二人で揃《そろ》って、林さんへ御年始に行こまいかや」


 温泉場の徒然《つれづれ》に、誰が発起するともなく新年宴会を催すことに成った。浴客は思い思いの趣向を凝らした。豊世が湯から上って来て見ると、姑は何処《どこ》からか袴《はかま》を借りて来て、裾《すそ》の方を糸で括《くく》っているところであった。
「豊世や、今日は林の御隠居さんと
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