を知る者は、誰一人として家の模様をあからさまに告げて寄《よこ》すものが無かった。
何にも達雄からは音沙汰《おとさた》が無い……苦しいことが有れば有るように、せめて妻の許《ところ》だけへは家出をした先からでも便りが有りそうなもの、とこうお種は夫の心を頼んでいた。また一月待った。
橋本の若夫婦――正太、豊世の二人は、母のことを心配して、便船に乗って来た。
この人達を宿の二階に迎えた時のお種の心地《こころもち》は、丁度吾子を乗せた救い舟にでも遭遇《であ》ったようで、破船同様の母には何から尋《たず》ねて可いか解らなかった。
忰《せがれ》や嫁の顔を見ると、お種も力を得た。彼女はすこし元気づいたような調子で、自分の落胆していることを若いものに見せまいとする風であった。
「お前達は子が無いで――こういう温泉地へ子でも造りに来たかい」
と言われて、正太と豊世とは暫時《しばらく》顔を見合せた。
「母親《おっか》さん、そこどころじゃ有りませんよ……」
と豊世が愁《うれ》わしげに言出した。
正太はこの話を遮《さえぎ》って、妻にも入浴させ、自分でも旅の疲労を忘れようとした。
浴室は折れ曲っ
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