毒に思って、万一の急に備えるようにと名倉の父から言われて貰って来た大事の金を送ることに同意した。三吉は電報|為替《がわせ》を出しに行った。


 夫は出て行った。お雪は子供の傍に横に成った。次第に発育して行くお房は、離れがたいほどの愛らしい者と成ると同時に、すこしも母親を休息させなかった。子供を育てるということは、お雪に取って、めずらしい最初の経験である。しかし、泣きたい程の骨折ででもある。そればかりではない、気の荒い山家育ちの下婢《おんな》を相手にして、こうして不自由な田舎に暮すことは、どうかすると彼女の生活を単調なものにして見せた。
「ああああ――毎日々々、同じことをして――」
 こうお雪は嘆いて、力なさそうに溜息《ためいき》を泄《もら》した。暫時《しばらく》、彼女は畳の上に俯臥《うつぶし》に成っていた。復たお房は泣出した。
「それ、うまうま」
 と子供に乳房を咬《くわ》えさせたが、乳は最早出なかった。お房は怒って、容易に泣止まなかった。
 炉に掛けた鉄瓶《てつびん》の湯はクラクラ沸立っていた。郵便局まで出掛た三吉は用を達して戻って来て、炉辺で一服やりながら、一雨ごとに秋らしく成る
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