た。その時に成って、三吉も登山の話をする気に成った。「一度行かない馬鹿、二度行く馬鹿」と土地の人のよく言うことなどを持出した。そして、世帯を持つからその日までのことを考えてみて、今更のように家の内を歩いてみた。
直樹の出発はそれから間もなくで有った。この青年が中学の制服を着けて、例の浅間土産を手に提げて、名残《なごり》惜しそうに別れを告げて行く朝は、三吉も学校通いの風呂敷包を小脇《こわき》に擁《かか》えながら、一緒に家を出た。
「直樹さん。左様なら」
とお雪は子供を抱いて、門口のところまで出て見送った。
停車場で直樹に別れた三吉は、直ぐその足で軌路《レール》の側《わき》を通って、学校へ廻った。日課を終った後、三吉は家の方へ帰ろうとして、復た鉄道の踏切を越した。その時は城門の前を横に切れて、線路番人の番小屋のある桑畠のところへ出た。番人は緑色の旗を示しながら立っていた。暫時《しばらく》三吉も佇立《たたず》んで眺めた。轟然《ごうぜん》とした地響と一緒に、午後の上り汽車は三吉の前を通過ぎた。
「直樹さんも行って了った。曾根さんも行って了った」
こう三吉は思いやった。
ぼっぼっと汽車
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