そうで……」とお雪は正太の細君のことを言った。「豊世さんでしたね」と三吉も引取て、「吾家《うち》へも手紙を貰いましたが、なかなか達者に好く書いてありましたッけ」
「ええ、まあ、御蔭様で好いお嫁さんを見つけました。あれ位のお嫁さんは探したってそう沢山《たんと》無い積りだ。大旦那始め皆な大悦びよなし……」
 と言って、嘉助は禿頭《はげあたま》を撫《な》でた。正太が結婚について、いかに壮《さか》んな式を挙げたかということは、この番頭の話で略《ほぼ》想像された。
「嘉助さんが褒《ほ》める位だから、余程好いお嫁さんに相違ないぜ」
「正太さんも御仕合ですこと」
 こんな言葉を、三吉夫婦は番頭の聞いていないところで交換《とりかわ》した。
 翌朝《よくあさ》早く嘉助は別離《わかれ》を告げて発った。その朝露を踏んで出て行く甲斐々々《かいがい》しい後姿は、余計に寂しい思を三吉の胸に残した。
 三吉は東京の方の空を眺めて、種々な友達から来る音信《たより》を待ち侘《わ》びる人と成った。学校がひける、門を出る、家へ帰ると先ず郵便のことを尋ねる。毎日顔を突合せている同僚の教師の外には、語るべき友も無かった。
 お
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