残っていた。彼女の風俗は、豊かな生家《さと》の生活を思わせるようなもので、貧しい三吉の妻には似合わなかった。紅《あか》く燃えるような帯揚などは、畠に出て石塊《いしころ》を運ぶという人の色彩《いろ》ではなかった。
三吉はお雪の風俗から改めさせたいと思った。彼は若い妻を教育するような調子で、高い帯揚の心《しん》は減らせ、色はもっと質素なものを択《えら》べ、金の指輪も二つは過ぎたものだ、何でも身の辺《まわり》を飾る物は蔵《しま》って置けという風で、この夫の言うことはお雪に取って堪え難いようなことばかりであった。
「今から浅黄の帯揚なぞが〆《し》められるもんですか」とお雪はナサケないという眼付をした。「今からこんな物を廃《よ》せなんて――若い時に〆なければ〆る時はありゃしません」
とはいえ、お雪は夫の言葉に従った。彼女は今までの飾を脱ぎ去って、田舎教師の妻らしく装うことにした。「よくよく困った時でなければ出すなッて、阿爺《おとっ》さんに言われて貰って来たんですが……」と言って、百円ばかりの金の包まで夫の前に置いた。お雪は又、附添《つけた》して、仮令《たとい》倒死《のたれじに》するとも一旦|
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