木《き》の生《は》えた澤《さは》を境《さかひ》にしまして、別《べつ》に峠《たうげ》といふ名前《なまへ》の小《ちい》さな村《むら》があります。この峠《たうげ》に、馬籠《まごめ》に、湯舟澤《ゆぶねざは》と、それだけの三《さん》ヶ村《そん》を一緒《いつしよ》にして神坂村《みさかむら》と言《い》ひました。
『名物《めいぶつ》、栗《くり》こはめし――御休處《おやすみどころ》。』
こんな看板《かんばん》を掛《か》けた家《うち》が一|軒《けん》しかない程《ほど》、峠《たうげ》は小《ちい》さな村《むら》でした。そこに住《す》む人達《ひとたち》はいづれも山《やま》の上《うへ》を耕《たがや》すお百姓《ひやくしやう》ばかりでした。その村《むら》にも伯父《をぢ》さんが寄《よ》つて挨拶《あいさつ》して行《ゆ》く家《うち》がありましたが、入口《いりぐち》の柱《はしら》のところに繋《つな》がれて居《ゐ》た馬《うま》は父《とう》さん達《たち》の方《はう》を見《み》まして、
『お揃《そろ》ひで、東京《とうきやう》の方《はう》へお出掛《でか》けですか。』[#底本では始めと終わりの二重かぎ括弧が脱字]
と聲《こゑ》を掛《か
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