》ちて消えますぞえ。


吹けば散る、散るこそ花の生命とは悟つたやうな人の言ひごと。この露は何とせう。咲きもせず散りもせず。ゆふべむすんでけさは消る。


草の葉末に唯だひとよ。かりのふしどをたのみても。さて美《あま》い夢一つ、見るでもなし。野ざらしの風颯々と。吹きわたるなかに何がたのしくて。


結びし前はいかなりし。消えての後はいかならむ。ゆふべとけさのこの間《ひま》も。うれひの種となりしかや。待ちやれと言つたはあやまち。とく/\消してたまはれや。



底本:「透谷全集 第一卷」岩波書店
   1950(昭和25)年7月15日第1刷発行
   1970(昭和45)年6月30日第13刷発行
初出:夢中の夢「女學雜誌」
   1895(明治28)年10月25日号
   朝靄の歌
   (1890(明治23)年9月4日作)
   春駒「女學雜誌」
   1895(明治28)年10月25日号
   春は來ぬ
   (1891(明治24)年2月15日作)
   地龍子
   (1891(明治24)年6月9日作)
   みゝずのうた「文學界 第十八號」
   1894(明治27)年6月30日
   一點星「女學雜誌 第二九八號」
   1892(明治25)年1月2日
   孤飛蝶「女學生 夏期號外」
   1892(明治25)年8月22日
   ゆきだふれ「白表・女學雜誌 第三三二號」
   1892(明治25)年11月19日
   みどりご「平和 第八號」
   1892(明治25)年11月26日
   平家蟹「國民之友 第一七四號」
   1892(明治25)年12月3日
   髑髏舞「文學界 第十七號」
   1984(明治27)年5月30日
   古藤菴に遠寄す「文學界 第三號」
   1893(明治26)年3月31日
   彈琴「文學界 第十八號」
   1894(明治27)年6月30日
   彈琴と嬰兒「平和 第十二號」
   1893(明治26)年5月3日
   螢「文學界 第五十八號」
   1898(明治31)年1月1日
   ほたる「三籟 第四號」
   1893(明治26)年6月30日
   蝶のゆくへ「三籟 第七號」
   1893(明治26)年9月30日
   眠れる蝶「文學界 第九號」
   1893(明治26)年9月30日
   雙蝶のわかれ
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