、われはこの花に対して魂魄《こんぱく》既に花心にありと言ひけるに、驚いて再び曰ふ、さてもさても日本は風趣に富める国かな。われら実際的の国民なる英人に取りては、兎《と》ても花の下に終日浮かれぞめくの興を貪《むさぼ》ることは覚束《おぼつか》なしと。
偶然の事なれども、以て東西人心の異なれるを知るに足るべし。われは花なき邦に生れて富める人とならんよりも、花ある邦に生れて貧しき世を送らん事を楽しむ。
[#地から2字上げ](明治二十五年四月)
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房
1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行
1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行
初出:「函東會報告誌 二三號」小田原・函東會
1892(明治25)年4月19日
入力:kamille
校正:鈴木厚司
2005年5月18日作成
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