に語り、無為にして常に為せり、渠を囲める小天地は悲をも悦をも、彼を通じて発露せざることなし、渠は神聖なる蓄音器なり、万物自然の声、渠に蓄へられて、而して渠が為に世に啓示せらる。秋の虫はその悲を詩人に伝へ、空の鳥は其自由を詩人に告ぐ。牢獄も詩人は之を辞せず、碧空も詩人は之を遠しとせず、天地は一の美術なり、詩人なくんば誰れか能く斯の妙機を闡《ひら》きて、之を人間に語らんか。
[#地から2字上げ](明治二十六年十月)



底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房
   1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行
   1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行
初出:「評論 十四號」女學雜誌社
   1893(明治26)年10月7日
入力:kamille
校正:鈴木厚司
2007年11月27日作成
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