熱意
北村透谷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)真贄《しんし》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)事|恒《つね》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#二の字点、1−2−22]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)赫々《かく/\》
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 真贄《しんし》の隣に熱意なる者あり。人性の中に若《も》し「熱意」なる原素を取去らば、詩人といふ職業は今日の栄誉を荷《にな》ふこと能はざるべし。すべての情感の底に「熱意」あり。すべての事業の底に熱意あり。凡《すべ》ての愛情の底に熱意あり。若しヒユーマニチーの中に「熱意」なるもの無かりせば、恐らく人間は歴史なき他の四足動物の如くなりしなるべし。
 労働と休眠は物質的人間の大法なり、然れども熱意は眠るべき時に人を醒《さ》ますなり。快楽と安逸は人間の必然の希望なり、然れども熱意は快楽と安逸とを放棄して、苦痛に進入せしむることあり。生は人の欲する所、死は人の恐るゝ
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