するの税斂《ぜいれん》は月に加ふ。先に拿翁の蹂躪《じうりん》に遭ひ、今後更に慮るところあり。昔日暴風雨を凌《しの》ぎ、疾雷閃電の猛威を以て、中原を席捲《せきけん》し去りたる夢は今|何処《いづこ》にかある。平和の君、平和の君、切に此邦《このくに》を憐れまれん事を願ふ。
闘犬
戦ひに死して背《はい》を敵に向けず、其勇は実に嘉《よみ》すべし。然れども戦ふ為に産《うま》れ、戦ふ為に仆《たふ》る可きは、夫れ仏国か。一大魔ありて人間界を支配するとせば、彼は仏国を以て一闘犬となしつゝあるなり。何となれば仏人は国利の為に戦ふよりも、寧ろ戦ひの為に戦ふ。平和、平和、遂に爾《なんぢ》を煩《わづら》はさざるを得ず。
[#地から2字上げ](明治二十五年三月)
底本:「現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集」筑摩書房
1969(昭和44)年6月5日初版第1刷発行
1985(昭和60)年11月10日初版第15刷発行
初出:「平和 一號」平和社(日本平和會)
1892(明治25)年3月15日
入力:kamille
校正:鈴木厚司
2005年5月18日作成
青空文庫作成ファ
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