他界に対する観念
北村透谷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)愬《うつた》へしめ、

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)到底|所謂《いはゆる》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「りっしんべん+宛」、第3水準1−84−51]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)もろ/\
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 悲劇必らずしも悲を以て旨とせず、厭世必らずしも厭を以て趣とせず、別に一種の抜く可からざる他界に対する自然の観念の存するものあり、この観念は以て悲劇を人心の情世界に愬《うつた》へしめ、厭世を高遠なる思想家に迎へしむ、人間ありてよりこの観念なきはあらず、或は遠く或は近く、大なるものあり、小なるものあり、宗教この観念の上に立ち、詩想この観念の糧《かて》に活《い》く。
 この観念は世界の普通性なり、而《しか》してこの観念あると共に離る可からざるものは、この観念に二元性《ヂユアリズム》ある事なり。或は善悪と云ひ、或は陰陽と言ひ
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