松島に於て芭蕉翁を読む
北村透谷
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)午《うま》の刻
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)喧笑放語|傍若無人《ばうじやくぶじん》なる
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから1字下げ]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)悉《こと/″\》く
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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余が松島に入りたるは、四月十日の夜なりき。「奥の細道」に記する所を見れば松尾桃青翁が松島に入りたる、明治と元禄との差別こそあれ、同じく四月十日の午《うま》の刻近くなりしとなり。余が此の北奥の洞庭西湖に軽鞋《けいあい》を踏入れし時は、風すさび樹鳴り物凄き心地せられて、仲々に外面《そとも》に出でゝ島の夜景を眺むべき様もなかりき。然《しか》れどもわれ既に扶桑衆美の勝地にあり。わが遊魂いかでか飄乎《へうこ》としてそゝり出で、以て霊境の美神と相《あひ》通化せざるを得んや。
寝床《しんしやう》われを呑み、睡眠われを無何有郷《むかうきやう》に抱き去らんとす。然れ雖《ど
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