。つく/″\と見給ひて。此犬誠に得度《とくど》せり。怨《うらめ》るものゝ後身《さいらい》なりとも。既に仏果を得たらんには。」云々《しか/″\》。
又た義実《よしざね》が自白の言《ことば》に「かくてかの玉梓《たまづさ》が。うらみはこゝに※[#「口+慊のつくり」、107−下−12]《あきた》らず。八房の犬と生《なり》かはりて。伏姫を将《ゐ》て。深山辺《みやまべ》に。隠れて親に物を思はせ。」云々《しか/″\》。
然《さ》れば、馬琴の八房は玉梓の後身たること、仏説に拠《よ》つて因果の理を示すものなること明瞭なり、然《しか》して、この八房をして伏姫を背《お》ひ去るに至らしめたる原因は何ぞと問ふに、事成る時は、伏姫の婿《むこ》にせんと言ひたる義実の一言なり。伏姫が父を諫《いさ》めて、賞罰は政《まつりごと》の枢機なることを説き、一言は以て苟且《かりそめ》にすべからざるを言ひ、身を捐《す》てゝ父の義を立てんとするに至りては、宛然たるシバルリイの美玉なり。爰《こゝ》に至りて伏姫の「運命」を形《かたちづ》くりしもの二段階あり、その一は根本の因果にして仏説をその儘なり、而して其二は一種のコンペンセイシヨ
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