最後の勝利者は誰ぞ
北村透谷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)傲《ほこ》る

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)事|能《あた》はざるは

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「月+(「亶」の「回」に代えて「面から一、二画目をとったもの」)」、80−上−23]
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 人生は戦争の歴史なり。刀鎗銃剣は戦争にあらず。人生即ち是れ戦争。世を殺せし者必らずしも虚栄に傲《ほこ》る勝利者のみにはあらじ、力ある者は力なき者を殺し、権《けん》ある者は権なき者を殺し、智ある者は智なき者を殺し、業《げふ》ある者は業なき者を殺し、世は陰晴常ならず、殺戮《さつりく》の奇巧なるものに至つては、晴天白日の下《もと》に巨万の民を殺しつゝあるなり。銃鳴り剣閃めき、戦血地を染め、腥風《せいふう》草樹を槁《か》らすの時に、戦争の現状を見る、然《しか》れども肉眼の達せざるところ、常識の及ばざるところに、閃々たる剣火は絶ゆる時なきなり。
 人の性は不調子なり、人の命は不
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