奔《はし》り、早晩大に相撞着することあるを期すべし、知らずや斯かる撞着の真中より、新たに生気|悖々《ぼつ/\》たる創造的勢力の醸生し来るべき理あるを。
(3)[#「(3)」は縦中横] 姉と妹
某の村に某の家あり、三千年の系図ありと誇称す。この家近き頃までは、全村の旧家として勢威|赫々《かく/\》として犯すべからざるものありて存せり。然れども是れ山間の一小村にして、四囲|層巒《そうらん》を以て繞《めぐ》らし、自然に他村と相隔絶したるの致せしのみ。今を距《さ》ること三十年、一度び他村との交通を開きてより、忽《たちま》ち衰廃して前日の強盛は夢の如く、泡の如く、再び回《か》へすべからざるものとなりぬ。この家に二個の娘子あり、姉は幼なきより隣村の某家に養はれて、人と成るまで家に帰らず、渠《かれ》の養はれし家は、宝貨充実、生を理する事一々其機に投ぜざるなし、之を以て彼の芳紀正に熟するや、豊頬秀眉、一目人を幻するの態あり、或時人に伴はれて其の実家に帰り、その妹を見しに、風姿は聊《いさゝか》も毀損《きそん》するところなけれど、自《おのづ》から痩弱にして顔色も光沢を欠けり。姉は頻りに己れ
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