の、必らず又た爰を去らざる可からず。この世界には永久の桂冠あると共に、永久の義罰あり。この世界には曾《か》つて沈静あることなく、時として運動を示さゞるなく、日として代謝を告げざるはなし。主観的に之を見る時は、此の世界は一種の自動機関なり、自ら死し、自ら生き、而して別に自ら其の永久の運命を支配しつゝあるものなり。
一国民に心性上の活動あるは、自由党あるが故にあらず、改進党あるが故にあらず、彼等は劇塲に演技する優人なれども、別に書冊の裡に隠れて、彼等の為に台帳を制する作者あるなり。偉大なる国民には必らず偉大なる思想あり。偉大なる思想は一投手、一挙足の間に発生すべきにあらず、寧《いづく》んぞ知らん、一国民の耐久的修養の力なるものを俟《ま》つにあらざれば、蓊欝《をううつ》たる大樹の如き思想は到底期すべからざるを。
過去の勢力は之を軽んずべからず、然れども徒《いたづ》らに過去の勢力に頑迷して、乾枯《かんこ》せる歴史の槁木《かれき》に夢酔するは豈に国民として、有為の好徴とすべけんや。創造的勢力は、何れの時代にありても之を欠く可からず。国民の生気は、その創造的勢力によつて卜《ぼく》するを得べし。
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