国民と思想
北村透谷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)詳《つまび》らかに

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)百花|妍《けん》を競ふ

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から2字上げ](明治二十六年七月)

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)つら/\今の思想界を見廻せば、
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     (1)[#「(1)」は縦中横] 思想上の三勢力

 一国民の心性上の活動を支配する者三あり、曰く過去の勢力、曰く創造的勢力、曰く交通の勢力。
 今日の我国民が思想上に於ける地位を詳《つまび》らかにせんとせば、少なくとも右の三勢力に訴へ、而して後明らかに、其関係を察せざる可からず。
「過去」は無言なれども、能《よ》く「現在」の上に号令の権を握れり。歴史は意味なきペーヂの堆積にあらず、幾百世の国民は其が上に心血を印して去れり、骨は朽つべし、肉は爛《くさ》るべし、然れども人間の心血が捺印《なついん》したる跡は、之を抹すべからず。秋果熟すれば即ち落つ、落つるは偶然にして偶然にあらず、春日光暖
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