哀詞序
北村透谷

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)順《したが》つて

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)恩怨|両《ふた》つながら

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「虫+元」、162−下−19]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)つら/\世相を観ずるに
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 歓楽は長く留り難く、悲音は尽くる時を知らず。よろこびは春の華の如く時に順《したが》つて散れども、かなしみは永久の皷吹をなして人の胸をとゞろかす、会ふ時のよろこびは別るゝ時のかなしみを償ふべからず。はたまた会ふ時の心は別るゝ時の心の万分の一にだも長からず。生を享《う》け、人間《じんかん》に出でゝ、心を労して荊棘《けいきよく》を過《すぐ》る、或は故なきに敵となり、或は故なきに味方となり、恩怨|両《ふた》つながら暴雨の前の蛛網《ちゆまう》に似て、徒《いたづ》らに啻《た》だ毛髪の細き縁を結ぶ、夕に笑ひしに因て朝に泣くの果を見つ、朝に泣きし
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