來島《クルシマ》某、津田《ツダ》某、等《とう》のいかに憐《あは》れむべき最後《さいご》を爲《な》したるやを知《し》るものは、罪と罰の殺人《さつじん》の原因《げんいん》を淺薄《せんはく》なりと笑《わら》ひて斥《しりぞ》くるやうの事《こと》なかるべし、利慾よりならず[#「利慾よりならず」に白丸傍点]、名譽よりならず[#「名譽よりならず」に白丸傍点]、迷信よりならず[#「迷信よりならず」に白丸傍点]、而《しか》して別《べつ》に或《ある》誤謬《ごびゆう》の存《そん》するあるにもあらずしてこの殺人《さつじん》の罪《つみ》を犯《おか》す、世に普通なるにあらずして[#「世に普通なるにあらずして」に白丸傍点]、しかも普通なる理由によつてなり[#「しかも普通なる理由によつてなり」に白丸傍点]、これを寫《うつ》す極《きは》めて難《かた》し、これを讀《よ》むものも亦《ま》た其《その》心《こゝろ》して讀《よま》ざる可《べ》からず、涙香《ルイコウ》子|探偵小説《たんていせうせつ》の如《ごと》く俗《ぞく》を喜《よろこ》ばすものにてなき由を承知《しようち》して一|讀《どく》せば自《みづか》ら妙味《みようみ》を發見《はつけん》すべきなり、余はこの書《しよ》を讀者《どくしや》に推薦《すいせん》するを憚《はばか》らず、學海居士《ガクカイコジ》の評文《ひようぶん》の目《め》に付《つ》きたるも之《これ》を以《もつ》てなり。(夜《よ》晩《おそ》く時《とき》少《すく》なく文意《ぶんい》悉《つく》さず之《これ》を諒《りよう》せよ)
[#地から1字上げ](明治二十六年一月十四日「女學雜誌」甲の卷、第三三六號)



底本:「明治文學全集 29 北村透谷集」筑摩書房
   1976(昭和51)年10月30日初版第1刷発行
初出:「女學雜誌 三三六號」女學雜誌社
   1893(明治26)年1月14日
入力:石波峻一
校正:小林繁雄
2005年9月10日作成
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