小林多喜二

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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)監獄《なか》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ずるい[#「ずるい」に傍点]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)とう/\
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「モップル」(赤色救援会)が、「班」組織によって、地域別に工場の中に直接に根を下し、大衆的基礎の上にその拡大強化をはかっている。
 ××地区の第××班では、その班会を開くたびに、一人二人とメンバーが殖えて行った。新しいメンバーがはいってくると、簡単な自己紹介があった。――ある時、四十位の女の人が新しくはいってきた。班の責任者が、
「中山さんのお母さんです。中山さんはとう/\今度市ケ谷に廻ってしまったんです。」
 といって、紹介した。
 中山のお母さんは少しモジ/\していた。

 私は自分の娘が監獄《なか》にはいったからといって、救援会にノコ/\やってくるのが何だかずるい[#「ずるい」に傍点]ような気がしてならないのですが……
 娘は二三ヵ月も家にいないかと思っていると、よく所《しょ》かつの警察から電話がかゝってき
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