へられた沈默だつた。次の瞬間、然し源吉の意見は一たまりもなく、皆が口々に云ふ罵言で、押しつぶされてしまつた。
それから後、源吉は一言も云はなかつた。始終、腕をくんだまゝでゐた。
まづ、そして、根本的なことが決められた。それからそれをどういふ風にしてやるか、といふことが問題になつた。それは、二、三日に、地主の差配が例年の通り※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つてくることになつてゐるので、それに、事情を説明し、すぐ地主に交渉を始めることになつた。この時、その色々な交渉の間小作の米をどうするのか、と云ひ出すのがあつた。それが又相當大きなことなので、中々意見が一致しなかつた。又百姓には、それを最後迄の見通しをつけた上で、確實な――手落ちのない成算でやつて行けることが出來なかつた。この所、先生の意見をきいた。校長先生は、まづ、町にゐる商賣人に自分達所有の畑物を全部賣つてしまひ、その背水の陣で、地主に當ることにしたらいゝ、といふことを云つた。それには二つの條件をつけた。第一は最初の地主への交渉が不調に終つたら、第二は地主がその結果、作物を無理に押へるといふやうな樣子が分つたら、といふの
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