ものになつてゐた。百姓達はいくら警察の拷問で、ビク/\してゐると云つても、如何に彼等が自分達を苦しめるものであるか、といふことが、骨の心《しん》までもしみ入つてゐた。それは間違ひなくさうだつた。だから、意志の強いものが、嫌應なしに、グン/\――グン/\その氣持をつツついて行つたら、今度百姓達は自分達の命である畑のことで、極めて不安な立場にも置かれてゐるのだから、又――そして而も前よりはモツト強く立ち上ることが出來る可能性があるやうに思はれた。「幹部」が居なくなつた今、初め源吉は、自分がそれを引きうけて、やつてみようと思つたのだつた。それがうまく[#「うまく」に傍点]行けば、それこそ素晴しいものだつた。さうなれば、源吉は、自分なら、あんなヘマ[#「ヘマ」に傍点]な、そしてあんな生ヌルイ[#「ヌルイ」に傍点]ことはしないぞ、と思つた。氣持は、この前のがきまる時からだつた。地主の家を燒打ちでもして、他人の血で肥つたまるで虱のやうな――いや、「虱そのまゝ」の彼奴等を、なぶり殺してやる!
 源吉はそれを――さうならせる迄、然し、待つてゐられなかつた。勿論さうなれば、自分一人でやるよりは、もつときゝめ[#「きゝめ」に傍点]があることは分つてゐた。が、この場合、源吉の氣持としては、さうする事さへはがゆ[#「はがゆ」に傍点]かつた。嚴密に云つて、源吉は、どうなる、など、さう先のことは考へなかつた。それよりも亦、自分のしようと思つてゐることさへ、出來るものか、どうかさへ分らずに、やつてのけようとしてゐたのだ。それは、この前の、鮭の密漁をした時、皆が二ヶ月も三ヶ月も魚を食へもせずに、モグ/\やつてゐたとき、源吉はそんなのにお構ひなしにさつさと自分でやつてのけた、それと同じだつた。「親父とお芳の遺言と、俺の考へ――この三つでやるんだ。」
 然し、一方、源吉は自分のすることが、さう無駄であるとは思はなかつた。かへつて、自分の思ひ切つたことが、闇にゐる牛のやうにのろい[#「のろい」に傍点]百姓にキツト[#「キツト」に傍点]何か、グアンとやるだらう、そしたら、それが、口火のやうになつて、皆が案外かへつて[#「かへつて」に傍点]手ツ取早く、一緒になつて、ヤレツ、ヤレツ※[#感嘆符二つ、1−8−75] と鍬と鎌をもつて立ち上る! さうなれば、まんまと、畑は俺達百姓の手に、もぎ取れるやうになるかも知
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