のは誰だろう。百姓でだけはない[#「百姓でだけはない」に傍点]。みんな一番安い十一月、十二月に俵の底をたたいてしまっている。――どんな百姓でも「米買上げ」が自分達には「クソ」にもならないことだけは知っていた。
「んでも、政府さんのする事だもの、やっぱし深い考えあるんだべよ。」と云っていた。
健がムキになって「買上げ」をコキ下したとき、佐々爺が手に持っていた新聞[#「新聞」は底本では「新間」]をたたいて、
「え、え、え、東京新聞も碌ッた見もしねえで、何分るッて! お前えみだいた奴の、小さいドン百姓の頭で何が分るッてか。お前えより千倍も偉い、学問のある東京の人が考えて、考えて決めた事だんだ。――東京新聞ば読め! 東京新聞ば読んでからもの云うんだ。ええか!」――顔をクシャクシャにさせた。
今年はこの後若し雨にでも降られれば「事」だった。
阿部の家の前の暗がりで、不意に犬が吠え立った。家の中から誰か犬の名を呼んでいる。小さい窓を大きく影が横切って、すぐ入口の戸が開いた。阿部が顔を出した。
旭川の人はまだ来ていなかった。
八人程集っていたが、若いものは健一人だけで、皆家をもっている農場
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