!」
「な、兄ちゃ、狐……」――瞬間、炉の火がパチパチッと勢いよくハネ飛んだ。それが由三の小さいひょうたん[#「ひょうたん」に傍点]形のチンポ[#「チンポ」に傍点]へ飛んだ。
「熱ッ、熱ッ、熱ッ※[#感嘆符二つ、1−8−75]……」
由三はいきなり絵本を投げ飛ばすと、後へひっくりかえって、着物の前をバタバタとほろった。泣き声を出した。「熱ッ、熱ッ※[#感嘆符二つ、1−8−75]」
「ホラ、見れ! そったらもの向けてるから、火の神様に罰が当ったんだ。馬鹿!」
姉のお恵が、物差しで自分の背中をかきながら、――「その端《さき》なくなってしまえば、ええんだ。」と、ひやかした。
「ええッ、糞ッ! 姉の白首《ごけ》!」
ベソ[#「ベソ」に傍点]をかきながら、由三が喰ってかかった。聞いたことのない悪態口に、皆思わず由三をみた。
母親がいきなり、由三の小さい固い頭を、平手でバチバチなぐりつけた。
「兄ちゃ、由この頃どこから覚べえて来るか、こったら事ばかり云うんだど!」
お恵は背中に物差しをさしたままの恰好で、フイ[#「フイ」に傍点]に顔色をかえた。それが見る見るこわばって行った。
と、お恵
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