雪の広場に見えた。――所々に小競合《こぜりあい》が起って、そこだけが急に騒ぎ出して、群衆がハミ出してくる。警官が剣をおさえながら、そこへバラバラと走って行く。
 二千人近くのものが帰りもしないで、ジリジリしていた。
「立ち止っちゃいかん。」
「固まると、いかん。」
「こら、こら!」
 警官があちこちで同じことを繰りかえしていた。
 群衆のしゃべったり、怒鳴り散らしたりしている声は、一かたまりに溶け合って聞える。時々鋭く際立ってそのなかから響くことがある。
 ――健は「有難かった!」有難い! 有難い! わけもなくその言葉が繰りかえされた。
 寒気《しばれ》ていた。広場はギュンギュンなって――皆は絶えず足ぶみ[#「ぶみ」に傍点]をしていた。下駄の歯の下で、もの[#「もの」に傍点]の割れるような音をたてた。
 演説会は最初から殺気立っていた。
「横暴なる彼等官憲……」
「中止!」
 直ぐ入り代る。
「資本家の番犬……」
「中止ッ!」
 ――二分と話せない。出るもの、出るもの中止を喰った。
 ――阿部も伴も演説が上手《うま》くなっていた。聴衆は阿部や伴のゴツゴツした一言一言に底から揺り動かされ
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