いてくれたら、と思うと、淋しかった。が、あの可愛い節は、一日でも早く健が昔の健にかえってくれるように、と祈っているときかせられて、健はがっかりした。
 小作争議に入ってから、※[#「┐<△」、屋号を示す記号、320−上−2]の旦那は争議団に関係している小作には絶対に「掛売り」をしないと云った。結局それは、小作には品物を絶対に売ってくれない事と同じだった。それに今迄の、何年もの間の「掛」をたった今払ってもらおうと、おどかした。
「社会主義者どもの尻馬に乗って、日本の尊い遺風にキズをつける大不忠者!」
 店先きで怒鳴りつけられた。
「在郷軍人の小作であって、若し争議に関係するものがあったら、陛下に対して申訳がないと思え! 軍人たるものの面汚しだ。」
 同じことを「青年団」や「青年訓練所」のもの達にも云って歩いた。
「んでも※[#「┐<△」、屋号を示す記号、320−上−14]さん、食えないんだもの、どうも仕様無えしな……。お前さん達なら、それでええかも知れねしどもな。」
 小作も※[#「┐<△」、屋号を示す記号、320−上16]に云われると、矢張りマゴマゴした。然しどうにも食えなかったのだ。
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