沢山ついた桐の箱をひろげて、ベラベラ饒舌《しゃべ》りながら、何時迄たっても動かなかった。馬の絵をかいた薬臭いちらし[#「ちらし」に傍点]を子供達にくれて、無理矢理に要らない薬袋を置いて行った。――然し、「長い」北海道の冬が待っていることを考えれば、襦袢の切れ[#「切れ」に傍点]もうっかり買えないのだ。
正月を少しでも矢張り正月らしく送りたいために、小作人のうち又働きに出るものは出た。――娘達は、大根や馬鈴薯や唐黍などを荷車につけて、H町へ、朝暗いうちに、表をゴトゴトいわせて出掛けて行った。自分達は荷馬車の上に乗った。提灯を車の側にさした。声のいい女は流行歌《はやりうた》をうたった。H町へつくと丁度夜が明けかける。
朝市に出るものは出、一軒一軒裏口から「おかみさん」と云って廻って歩くものは歩く。そして昼頃、空になった荷車にのって、今度はキャッキャッとお互いにふざけながら帰ってきた。――売っただけの金で襦袢や腰巻の切れを買ったり、餅屋に寄って「あんころ」などの買い喰いをした。
「のべ源」はH町で青物を売って、少しでも金をつかむと、電信柱に馬をつないで、停車場前の荒物屋に入って、干魚を裂
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