とまるで異《ちが》う態度にびっくりした。――と、この時今まで一口も云わずにいた上田のお母アが、皆が吃驚するような大きな声で一気にしゃべり出した。「んだとも! なア大川のおかみさん! おれ何時か云ってやろう、云ってやろうと思って待っていたんだが、お前さんとこの働き手や俺ンとこの一人息子をこったら事にしてしまったのは、この」と云って、お前の母を突き殺すでもするように指差しながら、「この伊藤のあんさん[#「あんさん」に傍点]のお蔭なんだ。あんさんがこっちにいたとき、よく息子の進とこさ遊ぶに来る来ると思ってだら、碌でもないことば教えて、引張りこみやがっただ。腕のいゝ旋盤工だから、んでなかったら、どんどん日給もあがって、えゝ[#「えゝ」に傍点]給料取りになっていたんだ。」――それは他の人もそッと持っていた気持だったので、室の中が急に、今迄とは変ったものになった。――「そればかりで無いんだ。この前警察から出てくると、俺もう吃驚してしまった。ケイサツの裏口から頭一杯にホウ帯した進が巡査に連れられて出てくるんでないか。俺どうしたんだと夢中になって、ガナ[#「ガナ」に傍点]った。進|奴《め》こっちば向い
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