独房
小林多喜二
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)饒舌《じょうぜつ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|燥《はし》ゃいで
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)ニヤ/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−
誰でもそうだが、田口もあすこ[#「あすこ」に傍点]から出てくると、まるで人が変ったのかと思う程、饒舌《じょうぜつ》になっていた。八カ月もの間、壁と壁と壁と壁との間に――つまり小ッちゃい独房の一間《ひとま》に、たった一人ッ切りでいたのだから、自分で自分の声をきけるのは、独《ひと》り言《ごと》でもした時の外はないわけだ。何かもの[#「もの」に傍点]をしゃべると云ったところで、それも矢張り独り言でもした時のこと位だろう。その長い間、たゞ堰《せ》き止められる一方でいた言葉が、自由になった今、後から後からと押しよせてくる
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