られるように、反対側のドアーのハンドルに手をかけたまゝ、顎《あご》を胸に落していた。やがて、ジリ、ジリ、ジリとベルが鳴り出した。私はホッとしてハンドルの手をゆるめた。
 私はゾロ/\と散歩をしている無数の人たちを見たが、そう云えば、私は自分の生活に、全く散歩というものを持っていないことに気附いた。私にはブラリ[#「ブラリ」に傍点]と外へ出るということは許されていないし、室の中にいても、うかつに窓を開けて外から私の顔を見られてはならないのだ。その点では留置場や独房にいる同志たちと少しも変らなかった。然しそれらの同志たちよりも或《あ》る意味ではモットつらいことは、ブラリと外へ出ることが出来て、しかもそれを抑《おさ》えて行かなければならなかったからである。
 だが、私にはどうしてもそうしなければならぬという自覚があったからよかったが、一緒にいる笠原にはずい分そのことがこたえる[#「こたえる」に傍点]らしかった。彼女は時には矢張り私と一緒に外を歩きたいと考える。が、それがどうにも出来ずにイラ/\するらしかった。それに笠原が昼の勤めを終って帰ってくる頃、何時でも行きちがいに私が外へ出た。私は昼う
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