のことを色々としゃべり合っている事についてはその大小を問わず、何時でも積極的に口を入れ、正しいハッキリした方向へそれを持ってゆくことに心掛けていた。何か事件があったときに、何時でも自分達の先頭に立ってくれる人であるという風な信頼は普段からかち[#「かち」に傍点]得て置かなければならないのである。その意味で大衆の先頭に立ち、我々の側に多くの労働者を「大衆的に[#「大衆的に」に傍点]」獲得しなければならぬ。以前、工場内ではコッソリと、一人々々を仲間に入れて来るようなセクト主義的な方法が行われていたが、その後の実践で、そんな遣《や》り方では運動を何時迄《いつまで》も大衆化することが不可能であることが分ったのである。
仕事まで時間が少し空《あ》いていたので、台に固って話し合っている皆の所へ出掛けようとしていると、オヤジがやって来た。
「ビラを持っているものは出してくれ!」
みんなは無意識にビラを隠した。
「隠すと、かえって為《た》めにならないよ。」
オヤジは私の隣りの女に、
「お前、さ、出しな。」
と云った。女は素直《すなお》に帯の間からビラを出した。
「こんな危いものをそんなに大切に持
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