たゞお茶をのんで帰ってゆくという客ではなく、女を相手に馬鹿話をしてゆく連中が多かった。それに一々調子を合わせて行かなければならない。それらが笠原の心に沁《し》みこんでゆくのが分った。私はまだ笠原の全部を投げ出しているのではない、機会があったらと色々な本を届けたり、出来るだけ色々な話をしてやっていたのだ。だが、彼女は今迄《いままで》よりモット色々なことをおッくうがり、ものごとをしつこく考えてみるということをしなくなった。
然《しか》し私はそんなに笠原にかゝずり合っていることは出来なかった。仕事の忙がしさが私を引きずッた。倉田工業の情勢が切迫してくるとゝもに、私は笠原のところへはたゞ交通費を貰《もら》いに行くことゝ、飯を食いに行くことだけになって、彼女と話すことは殆《ほと》んどなくなってしまっていた。気付くと、笠原は時々淋しい顔をしていた。が私はとにかく笠原のおかげで日常の活動がうまく出来ているのだから、その意味では彼女と雖《いえど》も仕事の重要な一翼をもっていることになる。私はそのことを笠原に話し、彼女がその自覚をハッキリと持ち、自分の姿勢を崩さないようにするのが必要だと云った。
だ
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