みの妨害をさせることが必要であると考えているのだ。そのために僚友会が動き出しているし、工場の中に青年団や在郷軍人の分会の組織を押し広げようとしていることが分る。工場が工場なだけに(軍需品工場なので)これらの組織が作られ易い危険な条件をそなえている。私たちは今三方の路から、敵の勢力と対峙《たいじ》していると云わなければならない。
 須山によると、工場の中で戦争のことをしゃべり廻って歩いている遣《や》り方は、今迄のようにただ「忠君愛国」だとか、チャンコロが憎いことをするからやッつけろとか、そんなことではなくて、今度の戦争は以前の戦争のように結局は三井とか三菱が、占領した処に大工場をたてるためにやられているのではなくて、無産者の活路[#「無産者の活路」に傍点]のためにやられているのだ。満洲を取ったら大資本家を排除して、我々だけで王国をたてる。内地の失業者はドシ/\満洲に出掛けてゆく、そうして行く/\は日本から失業者を一人もいなくしよう。ロシアには失業者が一人もいないが、我々もそれと同じように[#「ロシアには」から「同じよう」まで傍点]ならなければならぬ。だから、今度の戦争はプロレタリアのための戦争で、我々も及ばずながら、その与えられた部署々々で懸命に働かなければならない、と云っていた。
 僚友会の清川や熱田は、今度の戦争は結局は大資本家が新しい搾取を植民地で行うための戦争であると云って、昼休みに在郷軍人や青年団の職工などゝ議論をした。ところが清川は、たゞ今度の戦争は他の方面ではプロレタリアのために利益をもたらしている例えば金属や化学の軍需品工場などでは人が幾ら居ても足りない盛況だし、それは所謂《いわゆる》「戦争株」の暴騰を見ても分る、(そして何処で聞いてきたのか)帝国火薬の株はもと四円が今九円という倍加を示しているし、石川島造船は五円が二十五円という状態になって居り、弾丸製造に使うアンチモニーは二十円前後の相場が今百円位になっている。更に、ドイツは世界戦争で負けて減茶々々になったと思っているが、クルップ鉄工場などは平時の十倍もの純益をあげている。それだけ又我々の生活もお蔭《かげ》を蒙《こうむ》るのだから、一概に戦争に反対したって始まらない、その限りで利用しなければならない、そういうのが彼等の意見だった。こゝへくると、はじめ青年団や在郷軍人と議論していても何時の間にか意見が
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