点]、源吉は分けの分らないことを口早に言ったか、と思うと、
「怖《おっ》かない! オッ母ッ!」と叫んだ。
そしてグルッと身体を廻すと、猫《ねこ》がするように塀をもがいて上るような恰好をした。犬がその後から喰らいつた。
* *
その晩棒頭が一人つき添って土方二人が源吉の死骸《しがい》をかついで山へ行った。穴をほってうずめた。月夜で十勝岳が昼よりもハッキリ見えた。穴の中にスコップで土をなげ入れると、下で箱にあたる音が不気味に聞えた。
帰りに一人が、ちょうど棒頭の小便をしていた時、仲間に「だが、俺ァなあキットいつかあの犬を殺してやるよ……」と言った。
底本:「日本文学全集43 小林多喜二 徳永直集」集英社
1967(昭和42)年12月12日発行
入力:林 幸雄
校正:浅原庸子
2005年1月16日作成
青空文庫作成ファイル:
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