その地の労働者は、資本家に対して如何なる不平を持っているか。殊に××鉄工所の労働者の労働条件はどうか。現在持っている労働者の不平をどんな要求に結びつけて闘争を煽動すべきか、という形で進められるべきで、そうしたならばその集会は物識り研究会から、すっかり様子をかえてくる。現実に活《い》きた興味をもって活気が起きてくるのだ。」
 ――僕等はもうその有名な[#「有名な」に傍点]失敗に足をふみ入れかけていたんではないかな。
それはもう少し続いていた。
「例えば、××鉄工所に闘争激発のために、アジテエションのビラ等を持ち込む場合、その七名の労働者を矢面に立てることは断じて得策でない。それはまだ事の初まらない前に、我々の工場に於ける芽を敵のために刈り取られることを意味しているからである。かゝる仕事は当該工場の外部のもの[#「外部のもの」に傍点]が担当するのが最もいゝ。そして工場内の労働者はそのビラが工場内でどのような反響を起したか、何人の共鳴者があったかを、その晩の研究会での報告者の役目をつとめる。で、今日の工場内の動揺に対して、次にはどういう形で更にアジテエションが与えられねばならぬか、新たに出来
前へ 次へ
全139ページ中78ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング