キラに光った。水夫や漁夫は両頬を抑《おさ》えながら、甲板を走った。船は後に長く、曠野《こうや》の一本道のような跡をのこして、つき進んだ。
川崎船は中々見つからない。
九時近い頃になって、ブリッジから、前方に川崎船が一艘浮かんでいるのを発見した。それが分ると、監督は「畜生、やっと分りゃがったど。畜生!」デッキを走って歩いて、喜んだ。すぐ発動機が降ろされた。が、それは探がしていた第一号ではなかった。それよりは、もっと新しい第36[#「36」は縦中横]号と番号の打たれてあるものだった。明らかに×××丸のものらしい鉄の浮標《ヴイ》がつけられていた。それで見ると×××丸が何処《どこ》かへ移動する時に、元の位置を知るために、そうして置いて行ったものだった。
浅川は川崎船の胴体を指先きで、トントンたたいていた。
「これアどうしてバン[#「バン」に傍点]としたもんだ」ニャッと笑った。「引いて行くんだ」
そして第36[#「36」は縦中横]号川崎船はウインチで、博光丸のブリッジに引きあげられた。川崎は身体を空でゆすりながら、雫《しずく》をバジャバジャ甲板に落した。「一《ひと》働きをしてきた」そんな
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