って、大声で呼んだ。「しっかりせッ!」
雪だるまのように、漁夫達のかたまり[#「かたまり」に傍点]がコブをつけて、大きくなって行った。皆の前や後を、学生や吃りが行ったり、来たり、しきりなしに走っていた。「いいか、はぐれないことだど! 何よりそれだ。もう、大丈夫だ。もう――!」
煙筒の側に、車座に坐って、ロープの繕いをやっていた水夫が、のび上って、
「どうした。オ――イ?」と怒鳴った。
皆はその方へ手を振りあげて、ワアーッと叫んだ。上から見下している水夫達には、それが林のように揺れて見えた。
「よオし、さ、仕事なんてやめるんだ!」
ロープをさっさと片付け始めた。「待ってたんだ!」
そのことが漁夫達の方にも分った。二度、ワアーッと叫んだ。
「まず糞壺さ引きあげるべ。そうするべ。――非道《ひで》え奴だ。ちゃんと大|暴風《しけ》になること分っていて、それで船を出させるんだからな。――人殺しだべ!」
「あったら奴に殺されて、たまるけア!」
「今度こそ[#「今度こそ」に傍点]、覚えてれ!」
殆《ほと》んど一人も残さないで、糞壺へ引きあげてきた。中には「仕方なしに」随《つ》いて来たものも
前へ
次へ
全140ページ中124ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング