の中そのまゝの留置場は、彼のその絶望的な氣持を二乘にも、三乘にも暗くした。室は晝も晩も、それにけぢめなく始終薄暗く、何處かジメ/\して、雜巾切れのやうな疊が中央に二枚敷かつてゐた。が、それを引き起したら、その下から蛆や蟲や腐つてムレたゴミなどがウジヨ/\出る感じだつた。空氣が動かずムンとして便所臭い匂が[#「匂が」は底本では「匂か」]してゐた。吸へば滓でも殘りさうな、胸のむかつく、腐つた溝水のやうな空氣だつた。
彼は銀行に勤めてゐる關係上、何時も裏からではあつたが、眞に革命的な理論をつかんで、皆と同じやうに實踐に參加してゐたが、その色々な環境と[#「環境と」は底本では「還境と」]生活からくる膚合ひから云つて、低い生活水準にゐる勞働者とはやつぱりちがはざるを得なかつた。普段はそれが分らずにゐた。勿論彼さへ務めてゐれば、それからくる事はちつとも運動の邪魔にならなかつた。――留置場の空氣が、二日も經たないうちに、その上品な彼の身體にグツとこたえてきた。彼は時々胸が惡くなつて、ゲエ、ゲエといつた。然し吐くのでもなかつた。自家《うち》にゐれば、毎朝行くことになつてゐる便所にも行かなくなつた。粗
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