エんだ。」
 それで渡はもう一度×を失つた。
 渡は××に來る度に、かういふものを「お×はりさん」と云つて、町では人達の、「安寧」と「幸福」と「正義」を守つて下さる偉い人のやうに思はれてゐることを考へて、何時でも苦笑した。ブルジヨワ的教育法の根本は――方法論は「錯覺法」だつた。内と外をうまくすりかえて普及させる事には、つく/″\感心させる程、上手でもあつたし、手ぬかりもなかつた。
「おい、いゝか、いくらお前が××が免疫に[#「免疫に」は底本では「免疾に」]なつたつて、東京からは若し何んならブツ××たつていゝツて云つてきてゐるんだ。」
「それアいゝ事をきいた、さうか。――××れたつていゝよ。それで無産階級の運動が無くなるとでも云ふんなら、俺も考へるが、どうして/\後から後からと。その點ぢや、さら/\心殘りなんか無いんだから。」
 次に渡は×にされて、爪先と床の間が二三寸位離れる程度に××××××た。
「おい、いゝ加減にどうだ。」
 下から柔道三段の(以下二十六字削除」
「加減もんでたまるかい。」
「馬鹿だなア。今度のは新式だぞ。」
「何んでもいゝ。」
「ウフン。」
 渡は、だが、今度のに
前へ 次へ
全99ページ中71ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
小林 多喜二 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング