堀内さんに縛られた」
「山伏は何をしたろう」
 私も小供心に山伏の縛られて往った原因を知りたかったが判らなかった。私は清導寺の嬰児《あかんぼ》の死といっしょに奇怪な事件として、時どきそれを思いだして考えてみたこともあったが依然として判らなかった。ところで、二十年も過ぎてから村の古老と話しているうちに、そのことを思いだしたので聞いてみると、
「あれは、山伏が寺を乗取るつもりで、小供を殺したものだよ」
 と、云ったのではじめてその疑問が解けるとともに、これは怪談になる話だと思ったのであった。



底本:「日本の怪談(二)」河出文庫、河出書房新社
   1986(昭和61)年12月4日初版発行
底本の親本:「日本怪談全集」桃源社
   1970(昭和45)年初版発行
入力:Hiroshi_O
校正:小林繁雄、門田裕志
2003年8月2日作成
青空文庫作成ファイル:
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