》という悪党ですよ、朱孝廉《しゅこうれん》の知ったことではありません、ただ朱孝廉の妻が美しくないから、陸判官が私の頭と取っかえたまでです、それに私は体は死にましても、頭が生きておりますから、どうか朱孝廉を仇にしないようにしてください」
と言った。夢が醒めて呉侍御がそれを夫人に話すと、夫人もやはりそれと同じ夢を見ていた。そこで呉侍御は女を殺した悪人のことを官に告げた。官で人をやって詮議をさすと果して揚大年という者がいたので、捕えて枷《かせ》を入れて詮議をしてみると罪状を白状した。呉侍御はそこで更《あらた》めて朱の家へ往って、夫人に逢わしてくれと言って朱の細君に逢ったが、そんなことから朱を自分の婿とした。そして朱の細君の頭を女の死骸に合わせて葬った。
朱は後に三たび礼※[#「門<韋」、第4水準2−91−59]《れいい》に応じたが、試験場の規則に合わなかったので試験を受けることができなかった。礼※[#「門<韋」、第4水準2−91−59]とは礼部の試のことで、各省の挙人、即ち郷試の及第者を京師《けいし》に集めて挙行するいわゆる科挙のことであるが、それは礼部で掌っているから礼※[#「門<韋」
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