いで出て往ったが、やがて法海禅師を伴れて入ってきた。
「妖蛇は、この下に伏せてあります」
禅師はそこで口の中で何か唱えていたが、それが終ると鉢盂を開けた。七八寸ぐらいある傀儡《にんぎょう》のようなものがぐったりとなっていた。禅師はその傀儡に向って言った。
「その方は、何故に人に纏わるのじゃ」
「私は風雨の時に、西湖に来た※[#「虫+(くさかんむり/天/廾)、149−14]蛇《うわばみ》です、青魚《せいぎょ》といっしょになっておりましたところで、許宣を見て心が動いたので、こんなことになりました。それでも、かつて物の命を傷《そこの》うたことがございませんから、どうか許してください」
「淫罪がもっとも大きいからいけない、それでも千年間修練するなら命は助かる、とにかく本の形を現わすが宜い」
それとともに傀儡は白い蛇となって、その傍に青い魚の姿も見えてきた。
禅師はその蛇と魚を鉢盂に入れて、それに褊衫《けさ》を被せて封をし、それを雷峯寺の前へ持って往って埋め、その上に一つの塔をこしらえさして、白蛇と青魚を世に出られないようにした。禅師はそれに四句の偈を留めた。
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雷峯
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