往ったところで、あの騒ぎでしょう、私は恐ろしくなったから、船で婢の母の兄弟のいる、この家へ来ていたのです」
許宣の白娘子に対する怒りは解けた。許宣は白娘子に随いてその家へ往ってそこに一泊したが、それからまた元のとおりの夫婦となった。
そのうちに李克用の誕生日がきた。許宣夫婦も進物を持って李家へ祝いに往った。李克用は筵席《えんせき》を按排《あんばい》して親友や知人を招いていた。
この李克用は一個の好色漢であった。彼は白娘子を一眼見てたちまちその本性を現わした。白娘子が東厠《べんじょ》へ往ったことを知ると、そっと席をはずして後からつけて往った。そして、花のような女のその中にいることを想像してそっと内へ入った。内には桶の胴のような大きな白い蛇がとぐろを捲いていた。その蛇の両眼は燈盞《かわらけ》のように大きくて金光を放って輝いていた。李克用はびっくりして逃げだしたが、逃げるひょうしに躓《つまず》いて倒れてしまった。
李克用の家に養われている娘が、李克用の倒れて気絶しているのを見つけた。家の内は大騒ぎになって皆が集まってきた。そして、薬を飲ましたりして介抱しているとやっと気が注いた。家の
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