貧乏神物語
田中貢太郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)劈《さ》いて

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)近|比《ごろ》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「※」は「祿−示」、第3水準1−84−27、144−上−9]
−−

 縁起でもない話だが、馬琴の随筆の中にあったのを、数年前から見つけてあったので、ここでそれを云ってみる。考証好きの馬琴は、その短い随筆の中でも、唐山には窮鬼と書くの、蘇東坡に送窮の詩があるの、また、窮鬼を耗とも青とも云うの、玄宗の夢にあらわれた鍾馗の劈《さ》いて啖《くら》った鬼は、その耗であるのと例の考証をやってから、その筆は「四方《よも》の赤」に走って、「近世、江戸牛天神の社のほとりに貧乏神の禿倉《ほこら》有けり。こは何某《なにのそれがし》とかいいし御家人の、窮してせんかたなきままに、祭れるなりといい伝う。さるを何ものの所為《しわざ》にやありけん。その神体を盗とりて、禿倉のみ残れり」などと云っているが
次へ
全7ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング