中の島へ亀の宮をこしらえさして、その下へ亀の一族を住わすことにしたらよかろう、それには、今日鮒になった男を、元の人間にして、村の人に云わさすがええと云うて、王様は帰《い》んでしもうた、鮒になった男は、どうして元の人間になろうかと云うと、漁師の垂れた鉤《つりばり》に釣られるか、網に採られるかして、人間に料理してもらえば、元の人間になれると教えてくれたから、鉤を探したが、漁師が来んから鉤がない、それなら網に採られようと思うても、網を打つ者がない、そのうちに村の人たちは、亀を祭るなら、亀が人を採らんようになるじゃろうと云うて、島の中へ亀の宮を建ててしもうた、鮒になっておった人は、早く人に採られよう、採られようと思うておるうちに、やっと金沢あたりから遊びに来た人が、網を打ったが、一人の網を打った人は上手で、前へ網を投げたから入れなかったが、一人の人は下手で、網がからみあって舟の下へ落ちたから、その網にかかってあがって、頭を切りはなして料理をしてもらうと、人間になって、元寝ていた舟の中で眼がさめたが、もう亀の宮が出来ておったから、そのことを人に話しても、何人《だれ》もほんとうにするものがなかった
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