八人みさきの話
田中貢太郎

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)比《ころ》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)七人|御先《みさき》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、底本のページと行数)
(例)※[#「※」は「女+朱」、第3水準1−15−80、84−9]
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「七人|御先《みさき》」
 高知市の南に当る海岸に生れた私は、少年の比《ころ》、よくこの御先の話を耳にした。形もない、影もない奇怪な物の怪《け》の話を聞かされて、小供心に疑いもすれば、恐れもしたものだ。
「彼《あ》の人は、七人御先に往き逢うたから、病気になった」
 外出していて不意に病気になったり、頓死したりする者があると、皆それを七人御先の所為にした。ある者は、その七人御先を払うために行者を呼んで、加持祈祷をしてもらった。七人御先に対する恐怖は、今でも私の神経に生きている。
 この七人御先の伝説を話すには、先ず、八人御先に係る伝説から始めねばならぬ。

 天正十六年十月四日、岡豊《おこう》から大高坂
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