にその奇怪が多かった。
「七人御先、七人御先」
人びとはこう云って恐れた。最近になっても植田の者はその七人御先の墓の傍へ近寄ると、きっと奇怪なことが起った。明治になってからも二人の壮《わか》い男が、其処へ草刈りに往ったことがあるが、一人の男は、
「七人御先の墓地へ入らんようにしよう、植田の者に祟りがあると云うから」
と云うと、一人の男は笑って、
「そんなことは昔の迷信よ、今時そんなことがあってたまるものか」
と、うち消して二人でその墓地へ入って、草を刈っていると、黒い蛇が棹立ちになって二人の前へ出て来た。二人は鎌も何も捨てて置いて逃げだした。蛇は二三丁も二人を追っかけたがやっと見えなくなった。
私たちが少年の時に恐れた七人御先は、この新改の七人御先であるように思われる。
底本:「日本の怪談」河出文庫、河出書房新社
1985(昭和60)年12月4日初版発行
底本の親本:「日本怪談全集」桃源社
1970(昭和45)年初版発行
※本作品中には、身体的・精神的資質、職業、地域、階層、民族などに関する不適切な表現が見られます。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の
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